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NO.021 「夢を追いかけて……」

奥田 慎也氏
有限会社ニンジャスタジオ CEO
BREWに出会う夜明け前、私たちは主に海外向けのノキア・モトローラ製携帯電話用のJavaゲームを開発しておりました。製品の大部分を北米向けに開発しておりましたので、私たちは独自に米国での市場動向を調査する機会がありました。その折々で米国で今一番勢いがあるキャリアが、BREWを採用しているベライゾンワイヤレスであることもよく耳にしていました。
そんな中、一本のニュースが耳に飛び込んできました。日本でのBREWサービス開始のニュースです。そして、日本におけるBREWアプリを増強するための「BREWJapanセミナー」が開催されるということを聞いて、タイミングよく2003年5月に大阪でセミナーを受講させていただきました。
セミナーは全部で5日間あり、ものすごくハードな内容であったことを覚えています。このセミナーでBREWの基礎知識を蓄えることができたのは、私たちにとっては非常に幸運だったと思います。
この大きな知識と経験を活かしたいと考え、私たちは既にリリース済みのJavaゲームをBREWに移植することからBREWへの取り組みをスタートしました。7月に行われる Wireless JAPAN 展示会で、クアルコムジャパン様のブースにてゲームのお披露目を計画しておりましたので、開発期間としては事実上たったの1ヶ月半という時間しかありませんでした。
ドタバタと仕事が重なっていく中、厳しいスケジュールでの開発作業が始まりました。初期段階におけるエミュレータでの開発は、全く問題なくすんなりと作業が進みました。なんだ簡単ではないか? と思いましたが、今思えばここが地獄の始まりだったのです。
次のステップになるモジュール作成のためのコンパイル作業段階で、私たちは底の知れない泥沼の中にはまり込んでいきました。リンカが吐き出すエラーの意味と原因の内容が皆目わからなかったのです。この段階で既にかなりの日数が経過していました。時間とも戦わなくてはなりません。悪戦苦闘の日々が続きました。毎日のように事務所に泊まりこむ日々が続きました。
ようやくモジュールができあがり、実機テストの段階までこぎ着けました。ところが、当時携帯端末の実機が1台たりとも手元になかったのです。結局、東京にあるクアルコムジャパンのラボに通って少しずつ実機テストを行いました。弊社は大阪の会社ですので、ラボまでは簡単にいける距離ではありません。そのため、ある程度テスト箇所の目処をつけておいてから新幹線で東京のラボに通っていたのです。
実機でのテストは実にいろいろな問題発生の連続でした。特定の機種でのみ問題が発生する、ヒープが足りない、容量が足りない、スピードがでない、音が鳴らない、原因不明のリセット……。
どうすればいいのか手探りをしながらも刻々と時間が過ぎていきます。一つ一つの原因を潰しながら何とか難局を乗り越え、満足のいくBREWゲームが完成したのは Wireless JAPAN 展示会の開催初日の早朝でした。朝一番の新幹線に乗ってなんとか間に合ったことを、今でも鮮明に覚えています。
苦労の甲斐があって展示会は大反響でした。ゲームでの出展は当社だけでしたので、ブースには人が絶え間なくやってくる状態でした。展示期間中に私たちがいただいた質問で最も多かったのが「JavaとBREWでは何がどう違うの?」というものでした。違う人に会うたびに同じ質問ばかりされてしまうので、正直疲れてしまいました。
無事に展示会も終了し、いろいろな会社の方々から励ましのお声や厳しい指摘をいただきました。こうして皆様の声を励みにして、BREWアプリの商品化へと開発作業を進めていくことになりました。
BREWアプリの商品化にはパブリシャーさんが必要です。パブリシャーさんと提携しないと商用サービスできないわけですから、今度は提携していただけるパブリシャーさんを探す日々が続きました。最初は大手のパブリシャーさんと話をさせていただいたのですが、私たちの会社が設立して日が浅いこともあり、相手にされないことが多かったため大変苦労しました。
そんな状況が続く中、日本でのサービスを諦めて米国から商用配信を開始しようかと考え、今度はBREW ver1.xベースのゲームを開発して、提携先を探しておりました。先行きが見えない中、一条の光を放っていただいたのがメディアソケットさんでした。この運命の出会いがありまして、何とか日本でのBREWアプリ商用サービスが開始できるようになりました。メディアソケットさんには、私たちが一番大変な時期に救いの手を差し伸べていただきました。こうして助けていただいたことを、私は一生忘れることができません。
BREWアプリの商品化にあたり、一番苦労したのはあの地獄の検証作業です。ご存知の方も多いと思いますが、KDDIの検証作業は世界一厳しい基準だといっても過言ではないでしょう。これをクリアするために、ゲーム以外のシステム部分でかなりエネルギーを消費しました。悪夢の再現です。またしても悪戦苦闘の数ヶ月が始まりました。
弊社のBREWゲームには、すべてワールドランキングシステムというものを搭載しています。このシステムはBREWの特性を生かしたもので、BREW通信を使ってゲームのハイスコアランキングを一元管理し、世界中の人々が同じゲームでハイスコアを競争できるというシステムです。
この機能をまだBREWにも慣れていない状況で、無謀にもBREW通信を最初の商品から組み込んだために、またしても大パニックに陥りました。サーバ側にも専用プログラムが必要で、端末側にもKDDI仕様のガイドラインに沿った画面表示が必要でした。サスペンド・レジューム処理時のサウンド回りの癖を回避しないといけないところに大変な苦労を強いられました。
1年間が疾風怒濤のごとく過ぎていきましたが、今では3本のオリジナルBREWゲームをリリースできるところにまでたどり着きました。ノウハウの蓄積も多くなり、システム部分もフレームワーク化することができましたので、今後は開発期間の短縮と品質向上に力を注いでいくことができます。より一層、ゲーム本編部分に時間とパワーを注ぎ込んで、「携帯電話ならでは」と言われるゲームデザインのクオリティアップを図っていきたいと思います。
私たちはこの先もBREW専門の携帯電話用ゲーム開発会社(デベロッパー)として全力投球をしていきます。パブリシャーには決してならずに、少人数でクオリティの高いゲームを開発していく方針です。海外に力を注いできた当社だからこそ実現可能な、ワールドランキングシステムという付加価値の高いゲームを、日本を基盤にした上で、全世界に広げていくロードマップは既に用意されています。米国・中国・韓国では既にアプリケーションを年内に配信することが決定しています。最終的にはインド・ロシアにも展開していく予定になっています。
私たちは最終的なゴール(夢)を実現するため、ネットワークゲームを通した国際交流を目指すというグローバルな視点で、BREWオンラインゲームの企画・開発・配信をより一層進めていきます。まずは日本でBREWオンラインゲームを年内にリリースすることを目標に開発に取り組んでおります。私たちは3Gのキラーアプリはネットワークゲームであると確信しています。ハードウエアが進化すれば、私たちも進化していかなければなりません。皆さんのご期待に答えられるようにがんばっていきたいと思いますので、今後とも引き続き暖かいご支援をよろしくお願いいたします。
夢を追いかけていきます……これからも……。
では、皆さんとBREW 2004 Developers Conferenceでお会いしましょう。
最後になりましたが、いつもお世話になっておりますクアルコムジャパン様、KDDI様、デジタルハリウッド様、そして、メディアソケット様にこの場をお借りして御礼を申し上げます。